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七星学園の下校のチャイムがなる。
教室にて、一織はとりあえず帰宅しようと教室の机から席を立った。スマホを持ちながら確認するとあの人からのラビチャは来てないようだった。まぁ、あの人も今日は仕事に行ってるし来ないだろう。何かドジをやらかさないと良いがそれと同時に環が席を立ち話しかけた。
「いおりん!学校帰りにどっか寄らね?」
「四葉さんから誘ってくるの珍しいですね」
「俺だってたまにはそんな気分になんの」
「逢坂さんと何かありました?」
「はあ!?んな訳ねえじゃん!!」
そーちゃんは関係ねえしと環は否定し。何かあったなと一織は内心で察する。これだよこれとあるポスターを環が突きつける。それは七星学園から近くの河川敷で花火大会をすると言うポスターだった。
「四葉さん、花火見に行きたいんですか?日時今日ですか」
「なんかここ、ちょー綺麗じゃん
ドーン!パチパチって!!」
環の目がキラキラと輝いているようにも見えた。がたりと右隣から、ŹOOĻの一人亥清悠が席を立ち上がる。一織は即座に判断した。悠も今回訳ありだろうと。
「まぁ、おまえらがそこ行きたいってなら。どーしてもってならオレもついて行ってやるよ!」
「亥清さん聞いてらしたんですか。上目線な言葉が絶妙に気にはなりますが、狗丸さんと何かありましたか?」
「んな訳ねえって!!トウマと食の好みで揉めただけだよ!
なんで和泉は人の分析ばかりすんの!?」
それがいおりんらしい所だからなと環がまとめ。少しだけビビるわと悠が呟いた。
いつの間にか一織がIDOLiSH7を貫いていたら、環や悠とのクラスメイトの同学年との交流が増えていた。環とは同じグループであるから特にである。たわいも無い話をしては、たまに3人で軽く買い物をしたり、ゲーセンでだべったり。そう言えばあの人はそれに嫉妬したりしていた。高校生ってずるいと。僅か1歳差で大人気なく。
一織から言わせれば学校など、学業をするだけだと。あまり自分から交流しようとは思わなかった。環だって最初はそう思っていた筈だ。それが徐々に変わっていった。一織の友達は自称兄の三月だけではなく、新しい扉を開けるように広がって行ったのだった。
確認するようにもう一度あの人からのラビチャを見るが来てないと分かり、一織は二人に切り出した。
「四葉さん、そこって今から間に合いますか?」
ギリ間に合うんじゃねえかと悠が呟き。おっ、いおりん行く気満々じゃんと環が一織を茶化す。フッと一織が笑みをこぼす。あの人が悔しがるものをラビチャで送り付けると決めた。
一織達は電車を乗り継いで河川敷に向かう。大勢の人間が花火を見に集っていた。レジャーシートで待機している人達もいる。一織は少しだけ人混みが苦手だった。ほれと環が手を差し出す。
「汗をかいています」
「関係ねーじゃん、いおりんがはぐれないように手を繋ぐの! 」
「私は迷子なんです?」
「少なくともりっくんと何かあったような迷子に見える」
環が差し出した手を握ると少しだけ
一織の表情が和らぐ。
環が同じメンバーだからか少し安堵する。悠はやっぱり巳波か虎於と来るべきだったかと唸った顔をしてぶつぶつ言っている。
「でもこうして3人でこう出かけるなんて……悪くねえかもな」
「分かるいすみん!!んで相方が
悔しがるのがセット!!」
「逢坂さんは大人だから悔しがらないと思いますけどね。」
一織が指摘すると。悠が思い出したように答えた。
「あ……オレの所はめっちゃジュラシーぶつけてきそう」
「でも亥清さんの言う通り出かけるのは悪くないなと思いますよ」
大人になってまだアイドルを続けられていたら、またこうして3人でたわいのない話をして、行ったことない世界に出かけるのか。それは一織の中で新たな楽しみの一つでもあった。
「あっ、花火始まった!!
やっぱ綺麗!!そーちゃんに今すぐ送ろっと!!」
環の目がステージのペンライトの
海を見たようにキラキラと輝いているのを隣で一織が見つめる。
悠の目も何処か優しげな目線があった。
「じゃオレもアイツらに送信」
一織は花火を見ながら、同時に撮影する。七瀬さんはこの景色を見たらどんなリアクションをしますかね?
帰宅後、赤毛の彼から「ズルいズルい!今度はオレと行こうよ!いーおーり!!」とジュラシーのラビチャが飛んできたので。一織は「あなたも見つけてみたらどうですか?新しい扉を」と意味深に一織が返事を返して微笑んだ。